このたび、日本産業科学学会の『日本産業科学学会論叢』に、共同研究者の小倉哲也先生(太成学院大学)とともに、査読論文を投稿しました。
「モトツーリズム研究の体系化―観光・モビリティ・アドベンチャーの統合的視点による文献レビュー―」
林 恒宏(岡山理科大学)・小倉 哲也(太成学院大学)
これまで私は、スポーツツーリズムやアドベンチャーツーリズムの研究・実践に取り組むなかで、モーターサイクルによる観光、いわゆる「モトツーリズム」の可能性にも注目してきました。
モーターサイクルによる旅は、単に「バイクを使って観光地へ移動する」ものではありません。
道路の形状や景観、風や音、速度、車体の操作、仲間との共同走行など、「移動することそのもの」が観光経験になるという特徴があります。今回の研究では、この点をモトツーリズムを考える重要な視点として位置づけています。
一方で、世界のモトツーリズム研究を調べてみると、観光学だけでなく、モビリティ研究、アドベンチャーツーリズム、レジャー研究、交通安全、文化研究、地域計画、持続可能性研究など、さまざまな領域に研究成果が分散しています。
そこで今回の論文では、国際的な研究を体系的にレビューし、モトツーリズム研究を大きく、
* 経験価値・動機
* 目的地・市場・ルート
* コミュニティ・文化・真正性
* アドベンチャー・旅行意味
* 持続可能性・技術・インフラ
* 観光交通・安全
という6つの研究領域から整理しました。
さらに興味深かったのは、今回の検索条件と採択基準の範囲では、日本を主対象とする正式採択研究が確認されなかったことです。日本には山岳道路、海岸線、農山村、温泉地、道の駅、フェリー、キャンプ場など、モトツーリズムにつながる豊富な地域資源があります。それにもかかわらず、ライダーの行動や消費、ルート選択、地域経済への波及、安全、住民受容などを学術的に検証する余地はまだ大きいと考えられます。
今回のレビューは、私自身にとっても「これから何を研究すべきか」を整理する機会になりました。
今後は、文献レビューだけでなく、日本のモトツーリズムを実証的に研究していきたいと思っています。ライダーの旅行動機やルート選択、宿泊・飲食などの地域内消費、イベントへの参加、地域住民との交流などを調査し、将来的にはGPS等の移動データと消費データを組み合わせることで、「ライダーがどこを走り、その移動が地域にどのような価値を生み出しているのか」を明らかにしていきたいと考えています。
モトツーリズムを、一過性の「バイクによる観光振興」としてではなく、観光・モビリティ・地域産業・アドベンチャーを横断する一つの研究領域として体系化していくこと。
今回の論文投稿は、そのための一つのステップです。
まずは査読結果を待つことになりますが、今回整理した研究ギャップを次の実証研究につなげながら、日本におけるモトツーリズム研究を継続的に蓄積していきたいと思います。

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